語録 Collection of sayings
WHOの健康の定義
Health is a state of complete physical, mental and social well-being,
and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、完全な肉体的、精神的ならびに社会的に良好な存在状態であって、
単に病や弱さの存在しないことではない。
- 宮田尚之著「健康の研究」より引用
- この定義を訳した法務大臣官房司法法制調査部編の現行日本法現によりますと、「健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病や病弱の存在しないことではない」となっています。つまりwell-beingを福祉とし、infirmityを病弱と訳しています。なるほどwell-beingは辞書によりますと、福利、福祉、安寧などとなっていて、文字的には福祉でよいのであります。しかし、それは社会的ということにはよく通じますが、肉体的福祉、精神的福祉では日本語としてはうまく通用しませんので、well-beingを文字通り良好な存在と訳したのであります。また、infirmityを病弱と訳していますが、これも辞書の上では、やはり、病弱、衰弱、虚弱、弱点、欠点、病気などの字でありますが、病弱と言えば、病気に罹ってそのため弱ったという意味でありますから、その前にdisease病気という字がありますので、病弱とすれば、同じ病の言葉が重なってくると思います。従ってinfirmの語原的な意味、つまり固くない、強くないの意味をとって、ここでは弱さと訳したのです。そのためdiseaseも疾病と言わず病いとし、弱さと同じようなニュアンスの言葉にしました。なお、このdiseaseとinfirmityと並べたところに、特に私は大きい意味を感じます。それはdiseaseとは、病気を示し、病気とは一つの生化学的変化の起こった状態が主で、すなわち化学的変化を主とします。それに対し、infirmityは弱力、つまり、力学的すなわち物理的変化を主として示します。よってこの二つの言語によって、化学的と物理的な変化の起こっていること、つまり自然科学的なニ大要素に変化の生じていることを、うまく示していると思うのであります。
ヒポクラテス
ヒポクラテス『箴言集』第1章より
生命は短く、学術は永い。好機は過ぎ去りやすく
経験は過ち多く、決断は困難である。
医師はみずから自己の務めを果たすだけではなく
患者にも看護者にも、また環境にも
協力させる用意がなくてはならない。
ヒポクラテスの格言
害のないことが第一
Primum non nocere
医療人は、とにかく患者に健康上の「害」を与えないことが第一である。
医療人の側には、技術的な限界をはじめ、いろいろな束縛があり、診療によって患者に「よい結果」を与えられないこともある。
完全ではない人間なので、残念でもこれはしかたがない。
だがその不完全な人間である医療人が、同じ人間の患者と関わって、何らかの結果をもたらすのである。
だから、ごく小さなことでも、「悪い結果」は避けるようにせよ、このことが医療人の心得としての第一である。
医療人はこのことを「成果」を上げようとする以前の「大前提」にしなければならない。
*ヒポクラテス (紀元前460-紀元前377)
客観的な論理で、医術を迷信や呪術から解き放した、「医学」の創始者。「医聖」、「医学の父」あるいは「疫学の父」と呼ばれています。
「ヒポクラテスの誓い
医の神アポロン、アスクレーピオス、ヒギエイア、パナケイア、及び全ての神々よ。
私自身の能力と判断に従って、この誓約を守ることを誓う。
この医術を教えてくれた師を実の親のように敬い、自らの財産を分け与えて、必要ある時には助ける。
師の子孫を自身の兄弟のように見て、彼らが学ばんとすれば報酬なしにこの術を教える。
著作や講義その他あらゆる方法で、医術の知識を師や自らの息子、また、医の規則に則って誓約で結ばれている弟子達に分かち与え、それ以外の誰にも与えない。
自身の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない。
依頼されても人を殺す薬を与えない。
同様に婦人を流産させる道具を与えない。
生涯を純粋と神聖を貫き、医術を行う。
どんな家を訪れる時もそこの自由人と奴隷の相違を問わず、不正を犯すことなく、医術を行う。
医に関するか否かに関わらず、他人の生活についての秘密を遵守する。
この誓いを守り続ける限り、私は人生と医術とを享受し、全ての人から尊敬されるであろう!
しかし、万が一、この誓いを破る時、私はその反対の運命を賜るだろう。
現実に医学部で使用されているものではなく直訳したものを記す。
世界の医科大学や医学部で、卒業式や臨床実習開始のときに読まれるが、現在は学校独自の誓いに改編しているところが多く、その種類は50を超えている。
ねがい
歯だけの問題ではなく、心も身体も健康で、人間として生き、
価値あるすばらしい人生を送っていただくことが、歯科医の願いです。
(愛媛県歯科医師会「歯科予防読本」から引用)
歯だけの問題ととらえたのでは歯は良くならない。歯は健康の窓であり、しるしであり、入り口である。と同時に健康の前ぶれであり、また総決算書でもあるからである。
口腔諸機能の健康獲得が、多くの健康運動の出発点であり、また健康保持のゴールでもある。
自覚、自助、自立
病気を治すには、自分の生活習慣の中の隠された病因とおぼしきものを認識し(自覚)、
病気の正体を知り、病因を排除する対策をきちんと立てて実行する(自助)必要がある。
自分で病気になった生活を直さなければなりません(自立)。
この自覚、自助、自立の姿勢が非常に大切です。
片山恒夫 抜かずに治す歯槽膿漏 P.4
歯は健康の窓
歯だけの問題ととらえたのでは歯はよくならない。
歯は健康の窓であり、しるしであり、入り口である。
と同時に健康の前ぶれであり、また総決算書でもあるからである。
口腔諸機能の健康獲得が、多くの健康運動の出発点であり、また健康保持のゴールでもある。
モチベーション
モチベーションにおける有効適切な方法の見分けと使い分けは
指導者の意欲と努力および相手の行動に対する深い洞察力が肝要
この姿勢は学校教育においても同様である
片山恒夫 私の臨床 患者教育および治療の現状(3)
抜かずに救う手だてを
「抜くか抜かないか」
「どういう時に抜くか」の議論は、不要で不毛です。
「抜かずに救うにはどうするか」が、歯科医には大事です。
片山恒夫 「歯槽膿漏 —抜かずに治すー」より
ルネ・デュボス
「30歳になって医師を訪れるものは、ほかの人の手助けなしには自分の生活を適切に調節することをまだ身につけていないような愚かしい人だ」と断言しているローマ帝国時代のチベリュウスの言葉。
ルネ・ジュールズ・デュボス 「人間と適応」 P.288 みすず書房
生物学者。フランス生まれのアメリカ人。微生物学の権威で、後年は生態学的視点をもった文明批評家として活躍した人物。
著書に「人間であるために」「健康という幻想」「内なる神」など多数。
語録「心配のない世界でストレスもひずみもない生活を想像するのは心楽しいかもしれないが、これは怠け者の夢にすぎない」
語録「健康と病気の違いは、環境に適応しようと努力した結果、それに成功したか、失敗したかの差である」
トルドーの記念碑
時に癒し しばしば支え つねに慰む
Guerir quélquefois Soulager souvent Consoler toujours
医学、科学が格段に進歩した現在でも医療人の心得を表している。
どんな時にも患者の話をよく聞き、慰めることを常に心がけよ、という事であろう。
エドワード・リビングストン・トルドー(Edward Livingston Trudeau 1848−1915)の開いた結核療養所は、アメリカのカナダ国境近くのサラナク・レークにあり、アメリカ結核病学会が「トルドー・ソサエティ」というほどの由緒ある施設でした。
入院患者のためのサナトリウムの構造は、その後一般モダン建築物にも応用されるような清潔、大きな窓、ベランダ、新鮮な空気などに配慮されたものだったらしい。白い壁は衛生についてだけではなく、居住者の心の健康に良い影響を与えると考えられたようです。
1918. 8.10 、患者2000名が「感謝のしるし」として、療養所の前庭にトルドーの銅像を建てました。その台石の背面に、フランス語で刻まれていたのが上記の3行です。
「時に癒し(cure)、しばしば和らげ(relieve)、つねに慰める(comfort)」とも訳されています。
結核患者が激減したために、今ではこの有名な診療所も廃止され、この言葉は近くにあるトルドー研究所の図書室のパネルに残っています。
実は、このフランス語の出所がはっきりしていません。
フランスの諺であるとか、有名な結核研究者ラネネクのものであるとか言われていますが、どうも外科医アンブロワーズ・パレの言葉というのが主流です。
アンブロワーズ・パレは次の記事で紹介
アンブロワーズ・パレ
われ繃帯す、神、癒したもう
これは、16世紀のフランスの外科医アンブロワーズ・パレの言葉です。
アンブロワーズ・パレ(Ambroise Paré 1509~1590)は、16世紀絶対王政下のフランスで度重なる宗教戦争に外科医として活躍し、医学の発展に多大なる功績を残した「床屋医者」です。
床屋医者とは、床屋の生業とともに、外科処置を行う職業のことで、当時「医者」というのは内科医のことを意味し、傷の手当てなどは床屋医者の仕事だったそうです。
この言葉、日常行われている歯科医療を見直すにあたり重要な提言をしてくれます。
パレは外科技術の発展に多大な功績を残し、床屋医者の地位を高め、後に「近代外科の祖」と呼ばれる存在となりました。つまりは近代外科学の創始者です。
また、整骨術に関する著書はオランダ語訳を経て華岡青洲の手に渡り日本の外科医療に多大な影響を与えた。医学史家から「優しい外科医」という評された。
その理由として焼灼止血法のような侵襲性の高い治療法から血管結紮法のような侵襲性の低い治療法に切り替えたこと、患者一人一人に対して愛護的な態度で接したことにある。
病床にあったシャルル9世との会話でシャルル9世に「哀れな患者よりもっと良い手当をしてくれ」と言われ、パレは「それはできません。すべての病み人に国王と同じ手当をしているからです」と答えたという逸話が残っている。
床屋のシンボルマーク:赤:動脈 青:静脈 白:繃帯はあまりにも有名。
同じ配色にフランス国旗がある。
フランスの国旗は通称トリコロール(仏: Tricolore, 三色の意)と呼ばれる旗。ちなみに、青は自由、白は平等、赤は博愛(友愛)を表すというが、それは俗説である。
正式には白がフランス王家の色、青と赤はパリ市の紋章の色であり、三色が合わさり、パリと王家との和解の意味を表している。
赤と青はフランス革命軍が帽子に付けた帽章の色に由来し、白はブルボン朝の象徴である白百合に由来する。
Beruf
ドイツ語にベルーフ(Beruf)と言う言葉がある。
現在では「職業」と訳されるが、宗教的に直訳すると召命。
言い換えると、神から与えられた使命、天職というような意味である。
そこに世俗的職業においても行動的禁欲が適用されるようにり、いわば職業義務の思想である。
これは、ヴェーバーのなした驚くべき発見である。
ヴェーバーは、このベルーフという単語が初めてこの意味で使われたのは、
ルターが、旧約外典のシラク書をドイツ語に翻訳する際に、そういう意味を与えたのが始まりであるとしており、
その思想内容も、修道院生活を否定したルターの信仰の深みから現出したもの、としている。
それ以後、初めはカトリック修道院のなかにしかなかった行動的禁欲を用いての労働が現世の中に出てきた。
それを手段として救済を考える人がずいぶん現れてきた。